高齢者雇用について

参考資料

滋賀県雇用対策協会 講演録

皆さん、こんにちは。岐阜県からやってまいりました加藤でございます。まず、当社の高齢者雇用の紹介のビデオがございますので、それを皆さんに見ていただこうと思います。

実は平成14年に厚生労働省の高年齢者雇用開発コンテストにおいて、奇しくも私共が最優秀賞を頂戴しました。それがきっかけとなり、今日もここに立っているわけですけれども、その後、いろいろなマスコミ、テレビ等の取材を受け、当社の高齢者雇用を紹介して頂きました。今日ご紹介するビデオは、地元名古屋の中京テレビさんが、実際に働く高齢者の方の側に立って取材し、放映されたものです。どうぞ楽しみにご覧いただきまして、そこからまた話を始めたいと思います。

(ビデオ開始)〜(ビデオ終了)

以上でございます。有り難うございました。いかがでしたでしょうか、楽しそうでしたでしょう。皆さん色々と本音の話が出るものですから、私もあとで見て、こんな事を感じておられるのかと、驚いたような次第であります。

あらためまして、岐阜県からまいりました株式会社加藤製作所の加藤でございます。本日は、滋賀県の高齢者雇用促進の集いにお招きいただきましてありがとうございます。事例発表ということで、用意させて頂いたレジュメに沿ってお話をしたいと思います。

「高齢者の挑戦」という今日のテーマ、いいですよね。まさにうちの会社は、ビデオで見て頂いた通り、皆さんが楽しく挑戦をしている、そんな取り組みを始めたところであります。

弊社は、本社が岐阜県中津川市にございます。現在社員数は82名。関連会社として2社を持ったグループとして成り立っております。社員構成ですが、82名のうち、60才以上のシルバー社員が27名おります。この仕組みを始めたのが、平成13年の3月、土日の稼働をスタートしたのが、4月8日でしたので、現在 2年半たったところであります。私どもは、定年が60才なのですが、65才まで継続雇用、いわゆる定年延長を2年前に致しました。ただし、パートとしてですが、無条件で再雇用してます。

このように規則を変え、現在は、持ち上がりの社員として、60才以降さらにお勤めになる方と、新たに外からお見えになった方の、二通りあります。当初は、15名からスタートしたのですが、色々と試行錯誤しながら、2年の間に 30名近くになりました。そして、これからも、もっとシルバー社員を増やすつもりでいます。それだけ、高齢者の方々のやる気と、能力が驚くほど高いという事なのです。

私どもも、正直言いまして、初めのうちは、「シルバー」、いわゆるお年寄りという見方をしておりましたが、現在は、正社員とシルバーという垣根がとっぱらわれてしまった、という感じです。2年やってみて、同じ社員として、もちろん社員旅行や色々な行事も一緒にやりますが、それ以上に、現場で、仲間意識というものが出てきたように思います。

そうなるまで、最初はどうであったかと申しますと、15名のシルバー社員を雇用して、土日の90日を就業してもらいました。レジュメには、365日無休のコンビニエンスファクトリーと書かれてはおりますが、さすがにお盆と正月は休みとし、初年度は稼働日が350日でした。そして土曜日、日曜日に稼働する15名に対し、心配だったので2名に一人の正社員がつきました。加えて品質管理の者までつきまして、OJTで教えておりました。

でも、どうでしょうか、半年くらい経ちますと、そろそろ正社員の7名を少なくしてもいいのでは、という状態になってきました。誰もが、おそるおそる始めたものが、半年経ったら、組立に1名、プレスで1名、2名の正社員がケアをするだけで、仕事のほとんどを、シルバーの方たちにお任せしているという状況でございます。

最初の15名の中には、私どものような、金属加工の経験者は一人もみえませんでした。大工さん、魚屋さん、証券マン、JRの駅長さん、主婦と、様々でした。こうした方々が集まって下さるきっかけとなった、新聞の折り込みチラシについてお話させて頂きます。

私の知人の地元の大学の先生が、中津川市に委託されて、高齢者の意識調査をやりました。そうしたところ、仕事をしたくても職がないという人が、およそ 1000人近くいることがわかったのです。その話を彼から聞いて、よし、これだ、と思ったわけです。それまで、社内の経営会議では、売上が下がる、営業利益は上がらない、付加価値が確保できない、毎月頭の痛い悩みがずっと続いていました。何とかしなきゃいけない、と必死にもがく中、ふとこのアンケートの数字を聞いて、もしかしたら、これかもしれないと思いました。我々製造業は、機械が動いてなんぼの商売です。プレスの機械がガチャーンといって、スポットがジュッと鉄板と鉄板をくっつけて、そのガチャン、ジュッという音がお金なんです。高い機械を買ってもそれが動かないと商売にならない。しかし、よく考えてみますと、年間に110日も休みがある。その110日間は、機械が寝ている訳です。その寝ている機械を110日動かしたら、もちろんこれは、仕事があるという条件があっての事ですが、もし110日を動かせたら、毎日の大きな悩みである売上、付加価値、営業利益というものが、確保あるいは、向上させることができるのではないか。

稼働率と生産性をあげる、そのためには、土日を動かす、このコンセプトと中津川の高齢者の意識調査の接点がぴったり合ったのです。

もちろん、広告を出す前に、ハローワークにも足繁く通いましたし、市からは、老人クラブも紹介を頂きましたが、思うようにいかず、結果的には、キャッチコピー「土日はわしらのウイークデー 意欲のある人求めます。男女問わず、ただし年令制限あり、60才以上」という折り込みチラシに到達しました。

チラシは中津川市内に限り折りこんだのですが、翌朝、7時前から会社の電話は鳴りっぱなしです。最終的に面接に来ていただいた50数名の中から、男女ほぼ半々の15名を採用し、スタートしたのです。

ビデオの中にもありましたように、皆さん素人ですから、最初は、何もわからず、正社員とのやりとりの中でも惨めになったり、むかついた事があったというのは、本音だったと思います。そういう状況の中で、正社員もがんばる、シルバーもがんばる、というお互いの努力により、今はその垣根が払われて、会社は益々シルバーの人達の力を頼りにしているという、現在の姿に至ったわけであります。

さて、「喜びから喜びを」これが、私ども加藤製作所の経営理念でございますが、それを支える経営方針が3つあります。まず、人財育成、次に環境整備、3番目に本物の技術と商品、です。人を作って、場を作って、そして物を造る。我々は製造業、モノ造り屋ですが、何が一番大事かというと、人作りなんですね。

今日、皆さんの資料に添付しました、私どもの「企業変革を目指し人作りを仕掛ける」という記事ですが、お帰りになって是非、御一読いただけると幸いでございます。私自身の仕事も、この人作りに専念しているといっても過言ではありません。人材ではなく、会社の財産となる人財作り、これが私のメインの仕事であります。そのために、3つの柱があるのですが、まずは「掃除」です。

当社の始業は8時なのですが、その前に早朝掃除と言いまして、今日は金曜日ですので、会社の近所、道路や歩道橋などの掃除をします。まだまだ全社員の参加とはいきませんが、毎朝欠かさずやっております。人というものは、自分のいる場の環境に、身も心も似てくるものです。どういう環境を作りあげるか、特に物造りでは、どういう環境で物を造るかが、大変重要になってきます。やはり、良い会社というものは、すべからくきれいだと思うのです。

そしてきれいだからこそ、人間関係も良く、行き届いた気配りがあり、気づきもある。それを目指して、掃除を柱としています。

次に、私どもでは、幕末の松下村塾にあやかって名付けた、駒場村塾という、社員研修を、かなり前から始めております。最初はあまり抵抗のない、新入社員から始めたのですが、いまではベテランも、幹部も、パートもシルバーも、加藤製作所に所属する社員は、すべてこの駒場村塾の6コースのカリキュラムの中に組み込まれ、参加しています。

毎月1回、土日を利用して、恵那山麓の根ノ上高原で、一泊二日でやるのですが、おもしろいですよ。一例をお話しますと、まず、様々な異業種を訪問させて頂いて勉強します。

たとえば、牛丼の吉野屋さん、マクドナルドさん、100円ショップのダイソーさんなど、伸びている企業の側面を見て、その理由を学びます。我々製造業というのは、ある意味、井の中の蛙といったところがあります。なかなか、外を見る機会がない。だから、どんどん外へ出て、色々な企業、そこで働く人たちに教えてもらうのです。

駒場村塾は、手作りの研修です。私が、全てカリキュラムを考え、合宿形式で行っています。様々な方法を工夫しながら、会社はどういう方向へ行こうとしているのか、我々はどういう人材を求めているのかを伝えようと努力しています。

高齢者のお話から、だいぶ逸れてしまい、申し訳ありません。また、正社員には、求められる人材として、三つ話をします。一つ目は、心身ともに健康で、人に好かれる人間であること、二つ目は、リーダーになるか、人に負けない特殊技能を持ってほしい、そして三つ目に、自己啓発、自分を伸ばす努力を、自らが行ってほしいということです。

シルバーの皆さんと働くようになりますと、正社員の隣で、同じ仕事をシルバーの人がやっている光景があちこちで見られます。かたや、時給800円のシルバー社員です。コスト的に見たら、正社員は、その3倍にはなるのです。だから、正社員の役割というのが、ここにきて、クローズアップされてきました。正社員が担うべき役割は何か、どんな人材が求められるのかが、高齢者雇用を通じて浮き彫りにされてきたのです。正社員にとっては、厳しい見方をされるようになってきましたが、だからこそ、先程の3つの事、人に好かれる健康な社員、リーダーの資質、あるいは、特殊技能を持て、そして、自分の時間を持ち、本を読んだり、講演会に出かけたり、勉強し、自己啓発の出来る社員であってほしいということを、私は、塾を通じて伝えています。

今、社会が、経済がこのような荒波の中、誰もが不安を抱いて生きています。そこで、会社の未来はどうなっていくのかという事を、経営者がしっかり話をしているかどうか。

私は、その事がものすごく大事だと思うのです。会社がどういう方向を向いているのかという事は、社員皆が知りたいのです。それを、経営者が、一所懸命、熱心に、如何に社員に訴えるか、またそういう場を作るか。それは、大企業であろうと、中小企業であろうと関係なく、とても大事な事であり、私は、駒場村塾を、まさにその場と考えております。

一所懸命伝え、皆で学んだ後、夜は懇親会ということで、一杯飲んで楽しく語らいます。そして、次の朝は、5時半起床で、飯ごう炊飯をやります。同じ釜の飯を食べるわけです。

自分でご飯を炊くことで、当事者になる、これがいいのです。何事もそうですけれど、自分がお客さんで参加していては、ダメなのです。当事者として参加する仕掛けを作らないといけないと思っています。よく、宿で出される料理が冷たい、まずいとか、色々勝手を言いますが、自分が朝早く起きて、火をおこして炊いた飯ごうのご飯というのは、たとえ、焦げていても、おいしい。皆絶対文句を言わないです。それがどういう事かといいますと、当事者にしているからです。経営でも、仕事でも、お客さんではダメ、いかに社員を当事者にするかという所に、私はミソがあるのだと思います。

今までのように、仕事はあとからあとからやってきて、社員もある程度の能力があればよい、そんなインフレの時代は終わりました。これからの時代は、全員参加の経営が、大事ではないかという気がします。一人の経営者の力ではない、今いる社員の力をどう活かすか、どう伸ばすか。それは、経営者自らの手で伸ばすしかないです。外の誰かにお願いするのではなく、自分の子供と同じで、自分で育てる、その考えを基本として、これからも、駒場村塾を充実させていきたいと思っております。

人育ての場として、もう一つ、かじや学校があります。私どもは、明治21年に農鍛冶屋から始まり、今年で116年目を迎えました。現社長は3代目であります。資料の社員構成を見て頂きますと、50代、60代の者が多いことがおわかりになるでしょうか。

いわゆる団塊の世代の人たちです。でも今はその人たちの技術で、うちの会社は成り立っています。彼らの技術を、如何に次の世代にバトンタッチするか、いろいろ考えた結果、かじや学校をつくりました。これは、いうなればOJTです。

職場で、自分たちのところは、溶接の技術が大事だ、などと、育成したい項目を、毎年、自分たちで決め、スキルアップしていくのです。自分はここまで到達したい、あの人には、これをこの段階まで教えましょう、というような目標をたて、ベテランは若い社員に自分の技を伝えます。もちろん大事な技術については、認定制を敷いており、最終的には、成果主義として、人事労務賃金にはね返ってきます。

以上お話した3つを人材教育の柱として、常日頃から社員と一緒になって取り組んでおります。

話が飛びますが、これからは、人事労務賃金制度が益々もって大事になると思います。

やはり、うちも定年間近の社員がたくさんいます。これから退職金の問題は、避けて通れません。早くから人事労務、賃金制度というものにメスを入れないと大変です。当社も、今までは、社員の評価基準が非常に曖昧でした。最近よくやっている様だ、とかそのような程度のものだったと思います。でも今は、全部オープンにしています。きちんと面接をして、こういうところは良い、ここは、まだ成長してほしい、と1対1で話をします。

またコンピテンシーという考えがありまして、よくできる人の行動要件を一つのベースにして、七等級を設け、各職場で、自分はここまで上がろう、という取り組みをそれぞれがしています。

人事労務といいますと、昇給、賞与の時のみにクローズアップされ、いつもは埋もれているようですが、今からきちんとメスを入れないと、気づいた時には退職金等、様々な問題を抱えてしまうと思うのです。

ISO9001そしてISO14001。

現在私どもでは、12月の本審査にむけ、ISO14001の取得に取り組んでいます。

どんな企業にとっても、環境問題は避けては通れない大事な課題です。ISOに必要不可欠なマネジメントシステム、実はこれが、我々中小企業が苦手とする部分ではないでしょうか。普通わけの分かった人間同士が、いわゆるツーとカーでやるわけですが、それを全て標準化する。これが高齢者雇用とも通ずるものがある。やはり、誰がやっても、見て学べば、同じようにやれるという方向に持っていく事が、高齢者雇用にとっても必要不可欠なのです。

さて、次に、これからの時代の流れ、経営環境の変化というお話を少しさせていただきます。

株価は確かに1万円を超しましたが、今、日本の経済自体は、20年前の水準に逆戻りしたと見て良いのではないでしょうか。実際には、これは、1989年11月のベルリンの壁の崩壊から始まったのです。

今までは、いけいけどんどんの拡大期、雇用も人手不足だったし、仕事はあり余る程あり、造れば売れる時代でした。それが89年のベルリンの壁崩壊から、本当にV字型に下降を続け、現在も、下降、縮小、調整期に入っているのです。そして、もう時代の流れは逆戻りしない。デフレが日本経済を蝕むというような事が当たり前のように書かれているわけです。

我々中小企業にとって恐いのは、デフレです。牛丼が安くなった、ハンバーガーが安くなった、海外旅行が安くなった、だから全て良くなったというものではないのです。

デフレは言ってみれば、価格が下がることですが、私どもの会社でも、毎期2回のコスト低減があります。恐ろしいくらいのコスト低減ですが、自動車、家電、環境、住宅全てのお取引先で、コスト低減を要請されないところは、一社もありません。

すべからく、毎年値が下がるのです。こうなると、デフレは他人事ではなく、自分の事です。価格が下がるとどうなるか、もちろん売上が下がる。売上を確保しないと、付加価値も営業利益も確保できないのです。先程の局長さんのお話のように、厳しい時代がまだまだ続いています。失業が拡大し、不良債権が増えて、最終的には、政府の債務も膨れ上がっているわけです。

皆さんご承知だと思うのですが、国の借金は、今700兆円もあるのです。正確には、686兆円という事ですが、実際に我々に置き換えた時、年収の10倍の借金があるなんていうのは、信じられますか。新聞の見出しにも、膨らむ国債、見えぬ財政再建の道筋とありますが、国そのものは、もう破綻間近なんです。

今日、皆さんにご紹介しようと思い、1冊の本を持って参りました。サミュエル・ライダー著の、『トラトラライオン』という本なのですが、財政破綻によって、どのような事が起こるのかを解りやすく書いてあります。簡単に言いますと、これから大増税が始まるのです。そして、社会保障制度のサービスが低下する。この二つなのですが、これが恐いのです。

ご存じの通り、2003年4月から挙げてみますと、サラリーマン本人の医療費の負担が2割から3割になりました。健康保険の保険料が、賞与を含めた総報酬制に変わりました。厚生年金保険の保険料も上がります。そして5月には、発泡酒、続いてワインも上がり、7月には、たばこも上がりました。雇用保険の基本定額の給付率の引き下げも行われました。

上げない、上げないと言っている消費税も近い将来上がることになるでしょう。

どちらにしても、国の借金700兆円、財政破綻間近ということにより、まさに本の中にある通りに、大増税が行われ、社会保障制度、サービスは益々悪化せざるを得ない、そんな風に見ています。

そういう中で、私は、皆さんに、高齢者雇用において特に注目してもらいたい数字の話を少しさせて頂きます。

ご覧頂いている日本の現在の人口ピラミッドのある部分がぽこんと突出しています。これは、昭和21年、22年、23年生まれの人、つまり団塊の世代の人たちです。男女それぞれ220万人みえるのですが、その人たちがもうすぐ定年を迎えるのです。もうわずかですが、実際に大変な事になるでしょう。私は、雇用の逆流が始まるのではないかと見ています。

21日付の日経新聞に、坂口厚生労働大臣が、65才まで雇用の義務を法令化すると言っているのです。これはすごい事です。男女併せて毎年、440万人の団塊の世代が、もうすぐ定年をむかえるわけです。

昭和24年生まれの54才が60才になるのは、2009年ですが、その人達は、もう65才にならないと、年金がもらえません。ということは、働かないと食べてはいけないということなのです。 実際には皆さん貯えがあるのでしょうが、それを削って生きていくわけにはいかない。やはり、働かざるを得ないということです。

皆さん方は、すべからく65才まで、もしくは60才以上の人を雇うよう義務づけられる時が、もうすぐ来るということなのです。だからこそ、今から準備しなければならないのではないでしょうか。

またこういう記事もあります。日経ビジネスの2001年『100才まで生きるあなたへ』というものですが、これは平均寿命が100才になるというのです。

日経ビジネスのシュミレーションによると、2029年には平均寿命が100才を超え、2050年には人口の2人に1人が高齢者という時代になると言うのです。60才で定年を迎えたら、あと40年ある。もう、余生とは言えないです。

現在日本の最高齢は、115才、今年の100才以上は17,934人で、昨年より2,459人増加しています。

ますますもって少子高齢化、それも超高齢化が進むのは紛れもない事実です。

私どもの高齢者雇用の話に戻りますが、3年前から高齢者雇用を進めてきた中で、今日皆さんに是非お話したいのは、まず、経営者が高齢者雇用の明確な方針を持つということが大切です。

国が言うから、雇用開発協会が勧めるから仕方なく高齢者を雇う、では、済まないわけです。平均寿命が100才になり、団塊の世代の人たちが定年を迎え、少子高齢化はどんどんと進んでいくのだから、自分の会社では、高齢者雇用をどうするかを、明確な方針として打ち出すべきだと、私は考えます。戦略として、仲間として、社員として、担い手として。

高齢者は宝です。言うならば経験技能の活用ができます。皆さん、素晴らしいものを持ってみえます。モチベーションは高く、モラルもものすごくいいです。出勤時間は早いし、掃除も積極的にやってくれ、もちろん礼儀も正しい。皆さん一度リタイアした経験があるだけに、働くことにとても前向きで、終身現役を貫いておられます。

やはり人間、朝起きて、今日も仕事がある、やらなきゃいけないことがあるというのは、生きていく上で非常に大事なことなのではないでしょうか。

2番目に、経営者が高齢者雇用のメリットに対する認識を持つこと。では、どんなメリットがあるか。競争力がアップするのです。どうアップするのか。コスト体力がつくのです。

私どもでは、最初の年に15人の人に1年90日働いていただくことになりました。

時給は800円です。昇給賞与はありません。社会保険も一切ありません。それだから、広告にも書いてありますように、皆さん年金もフルにもらいながら、給料ももらえるのです。

800円で8時間だと6,400円、土日が月に大体10日だすると、64,000円です。その範囲であれば、殆どの方は、年金ももらえて、孫にお小遣いが渡せるくらいの給料を稼げるわけです。

これが、裏を返して、会社にとってはどうかと言いますと、15人の90日分が、なんと、私どもの正社員の1.3人分と同じコストだったのです。

1.3対15というのは、やはり大きいもので、コスト的には、ある部分非常に競争力がついたということがおわかり頂けると思います。

さらに、経営者だけでなく、現場管理者及び社員にも高齢者活用のメリットを認識させることが重要です。冒頭でお話しましたように、最初は、シルバー2人に正社員1人がつきました。不良を造ったらどうしよう、とそれが心配でならなかった。

確かに、最初の頃不良が出ると、「やっぱりシルバーや」なんていう、責任のなすりつけみたいなものがありました。しかし、私は、教える側の大変さは承知の上で、「3年たったら、プロになるから大丈夫、不良をこわがらずに思い切ってやってくれ」と正社員を叱咤激励していました。

もちろん、仕事内容の標準化があっての話ですが、普通、仕事というのを考えた時、例えば10の仕事があったとすると、そのうちの2つか3つは、教え方ひとつで、初心者にでもできるのではないでしょうか。

実際にマクドナルドさんなどでは、今日アルバイトとして入った高校生が、即、売り子になるわけです。そのくらい、マニュアルがしっかりしています。

仕事を求めてやって来る高齢者の方を見れば、そのくらいの能力と経験と勇気と元気があるわけですから、どんな仕事だってできるようになるはずです。

その辺を、会社全体で認識し、応援していきたいのです。

次に、私どもが高齢者雇用に際して、行ってきたソフト、ハード両面の改善について少し触れたいと思います。ソフト面としまして、多種多様な雇用形態の導入があります。

3つのパターンがあるのですが、コアは土日の方。平日は、山登りなどの趣味を楽しみ、土日に勤めるという方たちです。

次に、土日も勤めながら、平日も勤めるという方。最後に、土日は勤めずに、平日のみという方。この3パターンに沿って、製造部長が毎月シフト表を作ります。全く、コンビニと同じですね。大体平均しますと、皆さん週3.5日というところです。それ以上になりますと、社会保険等もからんできますので。きちんとした仕組さえ作っておけば、一人一人の都合にあった、どんな曜日、どんな時間での勤めも可能になるわけです。ですから、一つの仕事で、一人は、月火水、もう一人は水木金に勤める間接業務もあります。

今ではもう、製造だけではありません。技術、品質、さらに、総務、経理まで、高齢者ならびにパートの人たちの割合の重視し、積極的に取り組んでいます。

ハード面の改善としては、職場の環境整備、バリアフリー、ユニバーサルデザインなどを大事にしています。シルバーの皆さんは、元気とはいっても多少のハンディはありますから、体力的なハンディを補う工夫や、工場内の照明を明るくする事などは、できる範囲で、行う必要があります。環境整備も、皆さんと一緒に掃除をしながら、アイデアを出してもらい、徐々に取り組んでいるという状況です。

最後に、皆さんにも是非活用して頂きたい、助成金の話をします。

私は、自他共に認める助成金マニアです。一昨年は、全部で5つ頂きました。総額が2千数百万。雑収入で全部税金になってしまいましたが、その内容は、継続雇用定着促進助成金、特定求職者雇用開発助成金、そして今はもうありませんが、高齢者のためのバリアフリー助成金などです。高齢者雇用に関しては、本当に沢山の手厚い助成金があります。これを活用しない手はないですよね。

通常、100万円の付加価値をつけようと思ったら、およそ1000万円以上の売上を上げないとだめなところを、返さなくてもいいお金が頂けるのです。手続き等は面倒ですが、やる価値はあります。高齢者雇用については、探せば何かに当たる、この有り難い助成金の活用を、是非、お勧めします。

今現在もですが、これからも厳しい時代は続くと思います。厳しい時代には厳しく備える事、備えあれば憂いなしと言いますが、戦略としての準備が必要であろうと考えています。そのために私が一番大事だと思うのは、経営理念です。この会社は何を目指し、何をやるかという理念。

私どもで言えば、「喜びから喜びを」を核にして、お客様の喜び、地域の方の喜び、上司、部下、家族の喜びを、自分の喜びとできるような良い会社にしたい。次に工夫。工夫する場と書いて工場というと聞いたことがありますが、工夫により技術、品質のレベルアップができる会社。最後にローコスト経営。そしてこれにこそ、高齢者雇用、高齢者の方たちの力が、なくてはならないのです。

本日、私が、お話した弊社の事例が、僅かでも皆さんにとって参考になれば、本当に嬉しいです。私のつたない話で、また若輩ゆえに失礼な発言があったとしたら、どうかお許し下さい。

最後に皆様の益々のご発展とご健勝を心から祈念申し上げまして、終わりに致します。ご静聴ありがとうございました。

以上

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